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雨にぬれても

その時々の心の残ったものの記録が主な内容になるかと思います。音楽に関する話が多くなりそうです。

私的年間ベストアルバム2014

今年一年のリスニングの傾向を総括すると、去年一昨年くらいから、改めてポップスの面白さを感じた(というより、知覚出来る面白さの幅が広がった)ことに端を発する意識の変化をまだ引きずっている一年であったように思う。
端的に言うと、以前よりもボーカル物を、もっと言うと日本の(広義における)ポップスを聴く機会が多かった。
その結果、今年聴けた海外の新しい音楽については、フィジカルでリリースされた話題作ばかりになってしまったように思う。元々そこまで新譜を沢山聴く方ではないので尚更…。
そのため、目を通してくださった方に有意義な発見を与えられるとは思えないけれど、なんとなく僕の今年の気分を感じ取ってもらえるランキングにはなるのかなと思う。

雑文ではありましたが、以下本題に入らせていただきます。

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30. 原田知世 / noon moon

ボサノヴァ・デュオnaomi & goro のギタリスト、伊藤ゴローとの共作。
この辺はもうYMO人脈の繋がりの強さを感じる組み合わせ。
関係ないけど、これはめちゃくちゃいい画像。
「実は昔、細野さんが知世ちゃんのこと好きだったんだよね」みたいな話があったなら聞いてみたいものだ。
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内容はというと、本当に肩の力が抜けてるというか、日常のあらゆるシーンにそっと寄り添ってくれるような音楽。晴れた休日のちょっと早起きした朝とかに聴いたら最高じゃないだろうか?
まぁ休日は大体お昼近くまで寝てしまうのだが(いらない情報)
何はともあれ、原田知世さんがいい歳の取り方をしてるのを窺い知れる気がする作品。

29. 丈青 / I See You While Playing The Piano

SOIL&"PIMP"SESSIONS及び、派生ユニットのJ.A.Mのピアニストである丈青のソロピアノアルバム。
(良くも悪くも非常に荒っぽい)SOIL&"PIMP"SESSIONSというグループのピアニストに繊細な表現力が求められるソロピアノアルバムが作れるのか?という気もしていたが、菊地成孔が「埋蔵してる実力がすごいあって、ものすごく弾けるんだけど、やってる音楽的には、どっちかって言うと抑えて、かっこよくやってるイメージだった」と評しているように(そうでなければDCPRGなんていうグループに起用しない)、本作を聴くときちんとピアニスト丈青としての能力が遺憾なく発揮しているのが感じられた。
「(ピアノを弾く際にも)歌心を大事にしている」とインタビューで語っていた通り、非常にメロディアスで饒舌なソロピアノになっているように思う。

28. 古川麦 / FAR/CLOSE

ceroのサポートなどで参加している古川麦のソロアルバム。
ボサノヴァ含むブラジル音楽やジャズ、クラシッ クなどの影響を受けているとのことで、全体通して聴いてみるとブラジル音楽色が一番強く出ているように感じる。様々な管楽器、弦楽器を扱っているが、変に捻くれたりしておらず素直にポップスしているのがとてもいい。
それにしても、こういう作品がひょこっと出てきてしまうあたりに今のインディーシーンの醸成を感じざるを得ない。

27. Aphex Twin / SYRO

一曲目を再生した瞬間に「あ、Aphex Twin だ」という安心感(?)があったのだけど、13年の沈黙を経てもなお、誰にも脅かされない個性やオリジナリティを感じさせるというの凄いことなんだろうな、と思う。

26. コトリンゴ / birdcore!

新生KIRINJIにも加入してライブをこなし、自身のピアノ弾き語りツアーでも全国津々浦々を回るなど精力的に活動しているコトリンゴさん。(金沢でCDにサインを戴きました。)
より室内楽的に空気が増したように感じられる今作。
36歳(!?)という年齢を感じさせないふんわりとした世界観と丁寧に作りこまれたアレンジに耳を奪われる。

25. 伊集院 幸希 / 月曜日と金曜日 〜Sugar Hi Junnie〜

伊集院幸希 featuring RUMI 「彼女は金曜日」

こうやって年間ベストを考えていると、改めて「いいミュージシャンは、多くの場合いいリスナーなのだろう」ということが見えてくる。この”いいリスナー”にも、「あらゆるタイプの音楽の貪欲に聴くタイプ」と「特定の音楽に異常な愛着を示すタイプ」の二通りがあるように思う。
伊集院幸希という女性のパーソナルな部分についてはそれほどよく知らないが、インタビューを読む限り、どちらかというと後者のタイプのリスナーなのかな?という印象を受けた。
とにかく”ソウルミュージック”という揺るぎない土台が彼女の中にあるように思う。
それが、アウトプットとして出てくる音楽や表現に強く感じられることが非常に好ましい。

24. Lone / Reality Testing

Lone - "2 is 8"

今年はクラブミュージック全般(特に無機質な印象を受けるもの)に気持ちがあまり乗らなかったのだけど、本作のようなカラフルでメロディックでドリーミーなものは今の気分にもしっくりくることがわかった。クラブミュージックにおいて、こういった”軽快さ”と”ダサさ”はコインの表裏であることも多いが、本作はサウンドのクオリティでもって、表の面のみが際立って見えるように思う。

23. Taylor Mcferrin / Early Riser

Taylor McFerrin - Florasia

今年、「Jazz The New Chapter」、「Jazz The New Chapter2」というディスクガイドが2冊発売された。簡単に言うと、ヒップホップやエレクトロニックミュージック以降に生まれた近年のジャズについての一つの視点を提示しているものになる。僕も買ってはいたのだが、いつもの通り(買って満足してしまい)読まずに放置していたので、今になってパラパラと見ている。
正直に言って、この辺に関してはまだまだ非常に疎いのだが、「えっ、これも含めるの?」といった意外な選盤もあり、「こういう捉え方もあるのね」ってな感じで少しずつ聴いていこうかと思っている。
で、本作であるが、その本で大きくページを割いて紹介されているアーティストである。
成る程、確かにヒップホップ以降を感じさせるビート感覚があって良いのだけど、Flying Lotusほど先に進んでいるという印象はなく、あくまで僕と同世代の人間が一つずつ歳を重ねながらその時々のかっこいい音楽を聴いた上でジャズにコミットした結果として、ごく自然な成り行きで生まれる音楽にように思え、むしろ親近感のようなものを覚える作品だなという印象が強い。

22. Febb / The Season

Febb - Time 2 Fuck Up

同じくFla$hBackSのjjjソロアルバム、Kid FresinoをフィーチャーしたArμ-2と聴いた中でどれを選ぼうとしたら、今はこれ。
それにしても、若い世代がこれだけエネルギッシュに活動してるのはなんとも心強い。
Fla$hBackSのそれぞれのメンバーがソロアルバムを出したことだし、2015年にはFla$hBackSの2ndもあるのだろうか?2015年の楽しみの一つ。

21. くるり / THE PIER

くるり - Liberty&Gravity

くるりは僕が思春期の頃から活動しているバンドではあるのだが、僕個人としてはそこまで深い思い入れも愛着もなくここまで来たというのが正直なところである。そのため、「ワルツを踊れ」以降の作品については聴いてもいない。そんな僕にとって、くるりといえばどうしても初期の曲の印象が強く、(今更そんな時期との比較をすることに意味があるのかはわからないが、)いい意味でも悪い意味でも在った当時の青臭さが抜け、アーティストとしての成熟が感じられる作品のように思った。

20. rinbjo / 戒厳令

Rinbjö - 魚になるまで

菊地成孔プロデュースによる、女優菊地凛子のアルバム。
このアルバムについては年末リリースなこともあり、自分の中で消化しきれていない。
どうやら、「演じることに飽き、映画で肉体を曝け出した菊地凛子が、音楽を通して精神を曝け出すこと」を目的に作られたようである。そのため、リリックや語りの文章のクレジットが「N/K」になっていても、そこには菊地凛子の意思が反映されているものと思う。
そういう意味では、”売れることを度外視”し、菊地凛子が自身の暗部も含めた内面の発露のためだけに作った、もの凄く私的であり、歪さと危うさを孕んだアルバムだと感じた。
そして、だからこその表現の強さがある。

19. Pharrell Williams / Girl

Pharrell Williams - Happy

僻み根性に溢れた世の中の非モテ男には、モテている男を「モテていることが許せない男」と「モテていることを許せる男」に分けて見る習性が備わっているという。ご多分に漏れず僕にもそれがばっちり備わっているわけだが、僕の見立てでいうと、このファレル・ウィリアムスという男は後者だ。「もういっその事思う存分モテてくれ」ってなもんである。
以上を本作の感想に代えさせていただく。

18. OGRE YOU ASSHOLE / ペーパークラフト

OGRE YOU ASSHOLE - ムダがないって素晴らしい

インタビューにて本人たちが「ミニマルメロウ」という言葉を使っていたが、その言葉の通りの音楽に仕上がっており、やりたい事に対して”ムダがないって素晴らしい”なと思うアルバム。
一貫して低い温度のサウンドでありながらも、そこにしっかりと情感が乗っている曲が並んでいる印象だった。
このバンドの名前はちらちら目にしていたものの、作品をきちんと通しで聴くのは初めてだった。過去の作品に対しても凄く興味が湧いている。

17. Arca / Xen

Arca - Thievery

僕の取るに足らない音楽体験の上で聴いたArcaの音像には、確かに新鮮さのような物が存在するように感じられるのだが、僕がこのランキングに入れた理由は、どちらかというとそれぞれの曲から感じられる”詩情”のようなものに惹かれたためだと思う。
(センスの有無が介在するとはいえ)「サウンド的な追求」に関しては、音楽を構成する要素の中だと比較的年齢を重ねてからでも可能な部類の物なのかな?と僕個人としては感じているが、音楽全体で描かれる”世界”については、長い間かけて蓄積された人生の表出であり、最も重要なことのように思う。
そういう意味で、Xenには彼の描きたい世界がはっきりと感じられ、その世界がとてもフェティッシュな刺激に満ちていたため、選出した。

16. 牛尾憲輔 / アニメ「ピンポン」オリジナルサウンドトラック

BOXに入っていたComplete Edition(CD2枚組)ではなく、配信(CD1枚目相当)のみを聴いた感想。
このサントラで特に気に入っている曲が2曲(正確には3曲)ある。
一つは「Ping Pong Phase」(と、少し長めの尺の「Ping Pong Phase2」)。
これはアニメの作中でかかった瞬間に心を掴まれた曲だった。
簡単に説明すると、卓球のラリーの音をサンプリングしたライヒ風ミニマル、といったところ。
楽曲のサウンドや構造から、そして曲名に「Phase」と付いていることからもライヒの影響が伺える。
卓球の音をサンプリングする、という発想自体に特別な驚きはなかったのだが、単調なラリーの音から始まり、徐々に複雑さを増していく素晴らしい曲を作られた牛尾氏の手腕には賛辞を送りたい。
もう一つはオオルタイチ氏との共作である「Peco(ペコのテーマ)」
記憶にある限りだと、この曲がもっとも印象深く使われていたのは「対風間戦」だと思う。
主人公のペコという天才が試合の中でまた一つ覚醒するという作中でもとても重要な場面。
ペコの肉体の躍動は湯浅政明という天才アニメ監督によって、画として十二分に描かれていたが、精神の躍動と解放についてはこの楽曲がとても大きな役目を担っていたように思う。
余談になるがアニメ「ピンポン」自体も本当に素晴らしい作品だったので、是非観て欲しい。

15. KIRINJI / 11

KIRINJI - 進水式

今年一年を通じて、キリンジ(及びKIRINJI)のファンが中々に面倒臭いという事を知り、思った以上に堀込兄弟の両方(もしくはどちらか)を愛しているのだということを理解した。
迂闊なことをツイートしようものなら、エゴサで常に監視している非公式情報アカウントがRTを飛ばし、それに多くのアカウントで反応するという世界が出来上がっている。
恐ろしいので一言だけ。
キリンジとはちょっと違うけど、KIRINJIもいい」

14. Todd Terje / It's Album Time

TODD TERJE - Delorean Dynamite

LindstromやPrins Thomasに続く北欧産ニュー・ディスコの3番手としての地位を確立したように思えるTodd Terjeだが、個人的には先の二人の作品よりもTodd Terjeの作品のほうがしっくりくる…気がする。
「遊びがある」「ユーモアがある」、いろいろ言い様はあるが単純に聴いていて飽きがこない。
聴き終えると後味爽快な高揚感が残るアルバム。

13. 一十三十一 / PACIFIC HIGH / ALEUTIAN LOW

一十三十一『Pacific High / Aleutian Low』試聴ダイジェスト

全7曲のミニアルバム。前半3曲が夏曲、後半4曲が冬曲。
いつも通りのナイス・アーバン(アホっぽいですが、これ以上シックリくる表現が見つからない)。個人的には2014年1月に出たSnowbank Social Clubよりもこちらの方が好き。
10月に初めて一十三十一さんのライブを観たのだが、「一緒にアーバンしようね(ハート」というMCに心を撃ち抜かれた童貞は僕だけじゃないはず。
助手席に女の子を乗せ、一十三十一さんの曲を聴きながらドライブをすることを何度夢想したことだろう…。女の子を助手席に乗せるということは、同時に”僕の若干顎がない横顔を女の子にじっくり見られる”というシリアスな問題も発生するのだが、その心配をする必要は当分なさそう。
「CDを聴くだけで好きな女の子とアーバン出来る」その可能性を残していくれているだけで、一十三十一さんは偉大だ。

12. JINTANA & EMERALDS / DESTINY

JINTANA & EMERALDS - "Emerald Lovers"

このアルバムが想起させる風景というのは、この写真そのものであって、ハッキリ言うとそれ以上の説明がいらないように思う。

というか、「スウィート」だの「メロウ」だの「トロピカル」だのといった、僕でも簡単に思いつくような言葉は全部商品解説に書いてあるので敢えて書くまでもないのである。
兎に角、年中雨がちで、荒れ狂っている日本海側で聴く音楽ではない。(石川県民なりの自虐)

11. Moodymann / Moodymann

Moodymann - Desire (feat. José James)

過去に存在したあらゆるブラックミュージックの良さを凝縮した豆から作った極上のコーヒー、といった印象。本作においてもハウスを軸足に様々なブラックミュージックへとアクセスしている。アルバムを通して腰にくるグルーヴが担保されているが、なおかつニュアンスの音楽でもあるため、リスニングにおいても退屈することなく楽しむことが出来る。
各曲の繋ぎとして頻繁に傑作「Freeki Muthafucka(23曲目に収録)」のフレーズを使用するという焦らしが行われ、23曲目に辿り着いた時「遂にフルで聴ける!」となる悦びを誰かと共有したい。

10. 渡邊琢磨 / Ansiktet

視聴サイト

20名ほどの演奏家を個別にスタジオに招き、それぞれから音楽の断片を採集。その後、再構築して渡邊氏の頭の中にあるオーケストレーションを組み立てた作品とのこと。チェリストの徳澤青弦氏には「本当のオーケストラはこういう鳴り方をしない」と言われたそうだが、もちろんそういう反応も想定した上での作品であろう。
演奏家の方たちにとっては最終的な音楽の完成系が見えないままに、渡邊氏の要求に応えなければいけない環境だったため、ストレスフルなお仕事だったらしい。
メランコリックな映画音楽を思わせる曲が並んでいる。

9. Flying Lotus / You're Dead!

Flying Lotus - Never Catch Me ft. Kendrick Lamar

実はこれを書くタイミングで、改めてCosmogrammaを聴き返してみると「……(数年前に聴いた時の10倍くらいに)めちゃくちゃカッコイイやないか…」となった。
こういう自分の耳の変化みたいなものが嬉しくて音楽を聴き続けている部分は間違いなくあるなと思う。
本作は、フライング・ロータスがLAの人脈をフル活用し、今まで以上にジャズに対して真正面から向き合った作品になっている。彼がジャズと向き合うということは、偉大な叔父を持つ自らの血と向き合うことでもあるので非常に意義深いことに思える。
内容については、プレイヤーの演奏や個性をしっかり活かしたことで、ジャズの文脈に歩み寄っているように思えるが、フライング・ロータス特有の現代的な音像はそのまま踏襲されており、その両方が混ざり合うことでいいケミストリーが起こっているなという印象。
新世代のジャズにおける一つの指標のような作品として扱われる気がする。

8. 坂本慎太郎 / ナマで踊ろう

坂本慎太郎 - スーパーカルト誕生

どう楽観的に見ても今後数十年良くなる未来が見えない日本という国に対して、坂本慎太郎は何を思っているのだろう。(震災と一緒に語れることも多かった)salyu×salyuの「続きを」では日常の当たり前の出来事や景色に対する喜びの詞を提供しているし、前作「幻とのつきあい方」は内省的ではあったものの、そこまでシリアスな悲観があったように感じなかったが、このアルバムには世の中というものに対する冷めた絶望が通底しているように思える。
単純に前作から震災を挟んだり、社会情勢などで気持ちの変化があったのかもしれないが、そういった絶望と希望の間で揺らいでる感情が近年の坂本慎太郎の作品の根っこにあるように思う。
余談だが、「(小学生の時)リレー選手でクラスの人気者だったゆら帝の坂本君」というツイートが回ってきた時は思わず笑ってしまった。

7. FKA Twigs / LP1

FKA twigs - Two Weeks

去年、Arcaとの共同プロデュースである「EP2」が話題をさらったとのことだが、FKA Twigs、Arca共に今年に入ってから存在を認識した遅耳な僕である。
そんな僕が偉そうに言うのもなんだが、「先進的な音楽でありつつ多くの人の支持を集め、アイコンとしての価値もある」そんな彼女を指して、”新世代のビョーク”と評する向きもあるようで、それも理解出来る。いや、ビョークの次作をArcaが単独プロデュースすることが決まった2014年現在においては、FKA Twigsが少し先を行っていると言えるのかもしれない。
まぁ、そういったスパンでの”早い遅い”にはどれだけの価値があるかは不明だけど、とにかくマスに向かってこういった音楽をアピール出来るだけの存在感を持った人物がまた一人登場したことは素直に喜ぶべきことだろう。

6. 森は生きている / グッド・ナイト

森は生きている - 煙夜の夢 a,香水壜と少女 b,空虚な肖像画 c,煙夜の夢(夜が固まる前)

前作の1stアルバム「森は生きている」が大きな歓迎を持って迎えられた一方で、その反応に対する反発のような感想もネットに散見されていたように思う、バンド”森は生きている”。
前作の時点で雑多な音楽を経由して生まれた音楽であることは十二分に感じられたが、1stアルバム特有のフレッシュさが良くも悪くも若干の隙になっていたのかもしれない。
そして、本作、2ndアルバムであるが、サウンド的には基本的に1stアルバムの延長上にある。然しながら(若干のポップさの犠牲とともに)表現の深度が格段に深まっており、もはや「◯◯のフォロワー」的な言及の仕方、否定的な見方を許さないところまで来ているように感じられる。
メンバーそれぞれについてそれほど知っているわけではないのだけれど、ギターの岡田拓郎さんの音楽オタクぶりには相当な物が感じられ(それもこの世代の音楽好きな人たちのディグ傾向とは違う聴き方をされていそう…)、23歳という年齢でありながら、他の歳上メンバーを差し置いて最終的なサウンドの決定権を握っているというのだから天晴れではないだろうか。
ともあれ、これだけの表現を獲得するバンドのメンバーが、それぞれ長い音楽活動をやってきた上で集まったわけではなく、若い段階で上手く集まったのは驚きだし、今後あるかもしれないメンバーのソロ作も含め、本当に楽しみな存在。機会があれば是非ライブにも行ってみたい。

5. Eno・Hyde / Someday World

Eno • Hyde - The Satellites

今年出たブライアン・イーノとカール・ハイドの共作2作の1作目。
Pitchfork及びその他メディアでは本作よりも2作目の「HIGH LIFE」に評価が集まっているようだが、個人的にはこちらのほうが今の気分。
基本的にボーカル物でポップスの体裁を取っており、決して敷居の高い音楽ではないが、かといって軽く聴き流すような代物では決してなく、二人の今作に対する意欲と充実した制作を感じさせる。
サウンド面において何かしらの新鮮さがあるかというと決してそういったことはないが、どの曲にも二人の音楽的基礎体力のようなものが感じられて飽きがこないし、アルバムトータルでも決して退屈することはない。
「サウンドにおける鮮度」は確かに音楽において刺激的な要素の一つではあるだろうが、その鮮度は多くの場合時間の経過と共に失われ、最後に問われるのは結局”音楽的な強度”なのであろう。
この作品にはそれがある。酷く抽象的だがそう思わせる作品だった。

4. Lamp / ゆめ

Lamp - シンフォニー
Lamp - さち子

1曲目「シンフォニー」のイントロから名盤の予感を嗅ぎ取ることは恐らくそう難しいことではないであろうLampの7枚目。全体を通して素晴らしいが、北園みなみがアレンジで参加した「A都市の秋」、アルバムの最後を〆る「さち子」なども出色の出来だろうか。
まず、Lampというグループが(おそらくセールスにさほど恵まれないながらも)着実に作品を作り続けてきた事は尊敬に値する。それだけに、(実質リーダーの)染谷さんがレーベルBotanical Houseを立ち上げ、自身の作品の普及と新たなアーティストの発掘に乗り出すというニュースは素直に喜ぶべきものと受け取った。
過去の様々なポップス(ミナス、MPBなどのブラジル音楽を含む)の遺産を消化、昇華し、Lampほどの完成度で作り上げるグループは日本にあまりないのでは?とも感じられるが、Lamp周辺にはやはり同様の音楽を通過してきた人たちが集まってきているように思われる。
Botanical Houseのスタートと共に、そこからシーンと呼べるような潮流が日本に生まれると面白いと思うので、今後の活動に期待したい。
余談だが、日常的にインターネットに張り付いていた結果、廃盤になっているLampの2ndアルバム「恋人へ」の数量限定の再発を拾うことが出来たことは今年の嬉しかった出来事の一つだった。

3. D'Angelo & The Vanguard / Black Messiah

D'Angelo and The Vanguard - Really Love

約14年ぶりのリリースとなった本作。
前作リリース時、僕はまだ14歳だったし、リアルタイムで聴いた人達の興奮については想像するしかないが、本作の突然のアナウンスで起こったTLの盛り上がりと音楽好き、ミュージシャンのリアクションを見ると、いかにディアンジェロというアーティストが愛されているのかが容易に理解出来るようだった。
そして内容については、今年出たMoodymannの新譜がコーヒーだとするならば、本作はエスプレッソという印象を受けるほど、むせ返るような黒さとセクシーさにクラクラする物だった。
もうちょっと聴き込まないとはっきりとしたことは言えないが、今の気分だとBrown Sugar、Voodooより好きだと思えるくらい好き。つまり、最高。

2. 菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラール / 戦前と戦後

菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラール - 退行(映像については謎…)

この先「戦後」がまた「戦中」になってもおかしくない、そんな空気すら漂う昨今、それでも人は人を想うし、一人では生きられない。そんなことを考えながら、気がつくといつも手が伸びていたこのアルバム。
「Woman 〜映画”Wの悲劇より”」は薬師丸ひろ子のカバーで、オリジナル自体、作詞松本隆、作曲呉田軽穂松任谷由実)、編曲松任谷正隆という固い布陣の名曲だということを初めて知ったわけだが、美しいメロディーラインはそのままに、完全にこのアルバムの音に落とし込んでいるN/K a.k.a 菊地成孔の手腕は流石というところだろうか。
こちらも原曲自体が素晴らしいフランク・オーシャンのカバー「スーパー・リッチ・キッズ」だけれど、エレガンスさが増して、アメリカのキッズっぽくなくなってるのが最高。
「エロス + 虐殺」は比較的ミニマルなループを奏でる曲だが、出だし、中盤でストリングスが暴れまくり容赦なくリスナーにストレスをかけてくる。そこを抜けた後に聴こえるループは開放感と喜びに満ちて感じられるから不思議なものだ。やはり音楽にも日常にも適度なストレスというものが必要なのだろう(緊張感のない日常を送る自らへの戒め)
菊地成孔の若干安定感のない、でも魅力的で官能的な”大人の唄”が聴きたい人は是非。

1. 北園みなみ / Promenade

"promenade" digest / 北園みなみ

キリンジ冨田恵一の役割を一人で出来てしまう才能」という”ある人には強く訴求し、ある人には敵対心を植え付ける売り文句”をつけられたのは幸か不幸か…。そんなアーティストの1stミニアルバム。
北園みなみのyoutubeのアカウントをフォローし、”お気に入り”に入れている動画をチェックするというストーカー性を発揮する程、今僕が最も期待を寄せており、また最も冷静に見ることの出来ないアーティストでもある。「偏愛している」と言ってもいいかもしれない。北園みなみというフィルターを通して出てくるものが兎に角肌に合うのだ。
僕が個人的に北園みなみについて思うことは、あらゆる音楽を自分の血肉にしていく貪欲さと知性において、同世代のミュージシャンの中で頭一つ抜けた存在なのだろう、ということである。
各所でのアレンジ仕事などで、ともすれば職人気質な作家に思われている節もある(ような無いような感じだ)が、少なくとも僕はシンガーソングライターとしてのトータルな才能の燦めきに惹かれているように思う。
SoundCloudにアップされた「カザミドリ」という曲の歌詞を引用したい。
「通り過ぎるひとりひとりは 自分だけの言葉を見つけようと夢を見ている」
音楽家にとっての「言葉」が「音楽」と同義であるならば、彼もまた、様々な音楽を消化し、自分だけの言葉を見つけようとしているのだろう。
インタビューで「今は、なんでもやってみようかなと。」と語る彼の向かう先に興味は尽きない。きっとどんな音楽にでもなれるだろう。