犀の角のように

H30年7月9日より勉強ブログになりました。32歳からの学び直しの記録です。

吉松隆 / サクソフォン協奏曲「サイバーバード協奏曲」

今年の下半期に入ってから、吉松隆の音楽を楽しんでいる。おそ松でもカラ松でもチョロ松でも一松でも十四松でもトド松でもなく、吉松である。

 

吉松氏は1953年生まれで2015年現在、62歳。

この時代に生まれた現代音楽の作曲家ならば、時代の流れとして無調音楽を作ることが当たり前であったようだが、吉松氏はそういった流れや派閥には乗らず、調性感とメロディーのある音楽を孤独に作ってきた方のようだ。

実際に、吉松氏の音楽は叙情的で非常に美しいものが多く、長い年月をかけて作り上げられた調性というシステムが美しい音楽を作る上で如何に優れたモノなのかを感じさせてくれる。

それぞれをじっくり聴き込むとまではいかないものの、現状9枚ほど氏のアルバムを聴いた上で、現時点で僕が一番気に入っているのは

サクソフォン協奏曲「サイバーバード協奏曲」という曲。(1994年初演)

 

この曲はクラシックサクソフォン奏者の須川展也氏への委嘱作品とのこと。

(恥ずかしながら、この曲を聴くまで須川展也氏のことは存じ上げなかったのだけど、吹奏楽やサックスをやっている人の間では凄く有名…らしい。)

素人ながら、サックスが木管楽器の仲間であることを改めて感じさせるような柔らかい音を鳴らす人だなと感じた。

 

この曲には、

この曲を作曲中に、吉松の妹が癌で死去している。連日徹夜で看病をしながら病室で作曲を進めていた吉松に、「生まれ変わったら鳥になりたい」と言ったという。(wikipediaから引用)

といったエピソードがある。(病院の枕元で書いたのが上の動画8:50〜の第二楽章)

鳥は吉松氏の創作にとっても特別な存在であり、多くの曲のタイトルにBirdという言葉が付けられている。

日本野鳥の会の長靴をフジロックでしか使わなかった”凡”な僕には理解できないほど、鳥が好きな一家のようだ。

 

この「サイバーバード協奏曲」にも言えることだが、ここ最近の僕の音楽的嗜好として、「ジャズとクラシックの折衷感のあるもの」に強く惹かれている気がする。

マリア・シュナイダー・オーケストラしかり、

挾間 美帆しかり、

この前取り上げた小田朋美(小田朋美「シャーマン狩り」 - 雨にぬれても)しかり。

また、ジャズをルーツとしたポップスの範疇で語られることが多いけれど、北園みなみの音楽にも「ジャズとクラシックの折衷感」のような響きを感じているように思う。

(実際に北園さんは武満徹を意識していたり、(おそらくアナリーゼのために)「春の祭典」のスコアが欲しいとツイートしており、クラシックにも関心を寄せている)

そして、何年か前からニコライ・カプースチンの音楽が好きだったこともふと思い出した。

 

興味を持った音楽もあれば、同時に興味を失った音楽もあり、少しずつスライドしていく自分の音楽の好みに、楽しさと寂しさを感じている毎日だ。

 

(おまけ)

吉松作品でよく指揮を執っている人のインタビュー(藤岡幸夫さんが語る吉松隆の魅力

)や本人が日々更新している吉松隆ホームページも面白い。