犀の角のように

H30年7月9日より勉強ブログになりました。32歳からの学び直しの記録です。

ブラックパンサーについて(ネタバレあり)

昨晩、マーベルスタジオの新作「ブラックパンサー」を観て非常に感銘を受けたので、自分なりに感想をまとめてみたいと思います。

 

その前に、僕の現状の世界の認識についてです。

まず、データとして出ている事実として、資本主義の加速による富の偏りがあります。

そして、その富が特に集中しているのがアメリカのシリコンバレーにあるIT企業、特にAppleMicrosoft、Alphabet(Google)、AmazonFacebookのBIG5です。

これらの企業に共通する特徴は、例えそこにいくらかの欺瞞があったとしても、世界の人たちみんながそう望んでいなかったとしても、彼らがもたらす変化によって不利益が生じる人が沢山出てこようとも、強烈な意志と実行力で世の中を彼らの理想とする世界に作り変えていることです。

これらの企業は事業を通して手にした膨大な情報を背景として、人工知能の開発を進めています。また、自動車も電気自動車への移行による内部構造の変化にともない、これらのIT企業も含めた競争となってきます。自動運転技術やVR/AR、となんでもいいですが、この先の世の中に大きな変化をもたらすであろうあらゆるテクノロジーがコンピューターサイエンスの上に成り立ってきて、どうやらこの流れは止まることがなさそうです。

もし、従来のコンピューターとは比べ物にならない処理速度が出るという量子コンピューターの技術がより成熟したら、そのスピードは更に加速するはずです。

更にGoogleマップなどで兼ねてから都市についての検証を行っていたAlphabetはカナダのトロントで市内12メーカーの未開拓値において都市そのものの開発を行っています。

 

現時点でどの程度の人がこの都市に魅力を感じるのかはわかりませんが、人々が今よりももっと自由に自分の生きる場所を選べる時代になった時、グーグルがこれらの実験で提案するような都市で生きたいという人はかなり出てくるんじゃないかと思います。

 

さて、ここからようやく映画の話になりますが、ざっくりとあらすじです。

まず、本作の舞台となるワカンダ王国は世界から存在を隠しているテクノロジー立国として描かれています。

物語は主人公ティ・チャラの父であるティ・チャカ王の殺され、ティ・チャラが王位を継承するところから始まります。ティ・チャラは自国の国民を守ること(ひいては自国の国益を守ること)を第一に考えて国を発展させてきた父ティ・チャカを心から尊敬しており、当初は父と同様の方針で国を率いていくことを考えます。

物語の中盤から、父ティ・チャカがそういった国家の運営をする中で隠していた欺瞞とそれによって犠牲になったり、被害を被った人物の存在が明らかになってきます。

ワカンダに科学技術の発展を抑えられているジャバリ族もそうですし、父をティ・チャカに殺されたエリックもそうです。

エリックはワカンダとワカンダの科学技術を乗っ取り、そのテクノロジーを武器にかつての帝国主義のような振る舞いで世界を変えていこうと企てます。エリックとの王位をかけた決闘の際、心の優しいティ・チャラは自分の父がエリックにした行いに対する罪悪感のようなものから力が発揮出来ず、決闘に敗れてしまいます。

一命を取り止めたティ・チャラはハーブの見せる幻の中で父と父のやり方からの決別を宣言し、暴走するエリックを止めに戻ります。

エリックに勝利し、国王の座に戻ったティ・チャラは、ワカンダの本来の姿を世界に公開し、ワカンダの科学技術を世界に広め、富を世界に分け与えることとします。そして、エリックの住んでいた土地に国際支援センターを設立します。場所はカルフォリニア、シリコンバレーのある土地です。

 

僕はこのワカンダという国をIT企業のメタファーとして観ました。

父ティ・チャカのワカンダの運営のあり方は、IT企業が自分たちの利益を過剰に優先する姿に重なりますし、エリックの存在はそういった企業や資本主義に搾取された途上国であったり、資本主義で負けた側の存在と重なります。そして、エリックがワカンダを乗っ取ってやろうとしたことは、IT企業が自分たちの都合のいいようにテクノロジーで世界を過剰に変えていくことに対する警鐘のようにも思えます。

最終的にティ・チャラが選んだワカンダのあり方は、富めるものにはそれ相応の責任があり、社会の模範として振る舞う義務があるというノブレス・オブリージュの思想を体現するものです。

そのことを、これから益々一部の人や企業への富の集中が加速していきそうな現代に、資本主義の中心であるアメリカから、これまでの人類の歴史の中でずっと搾取されてきたアフリカの黒人を主人公にして描かれたことにはとても大きな意味があると感じました。

実際のところ、アメリカのIT長者がこういったことを何もしていないわけではなく、マイクロソフトの第一線を退いたビル・ゲイツはビル&メリンダ・ゲイツ財団という世界最大の慈善基金団体を設立し、世界の貧困や病気、教育などの問題の解決に力を入れています。その基金には投資家のウォーレン・バフェットも300億ドルの寄付をしているとのことです。

世界の格差の解消が人類の持続的な発展に繋がるといったような大きな視野での取り組みや行動を僕のような小さな人間が日々の暮らしの中でどこまで出来るについてはなかなか難しいところもあると思いますが、知らずに生きているよりはちゃんと知った上で生きていきたいなということを改めて考えさせられる映画でもありました。