犀の角のように

H30年7月9日より勉強ブログになりました。32歳からの学び直しの記録です。

音楽とお金について

今日、この記事をみました。

Appleが、年々売り上げが低下していく音楽のデジタルダウンロード販売を終了してサブスクリプションサービスApple Music一本に絞る方向で考えているとのこと。これはもう抗えない時代の流れだな、と思います。

思えば、レコードやCDといったメディアも元々はその時代時代の技術でいかに効率よく音楽をパッケージして人々に届けるか、といったものでした。

今もミュージシャン、リスナー共にレコードやCDといったメディア自体への愛着を持っている人は沢山いると思いますし、それ自体は全く否定すべきことではないと思います。

ただ、「音楽が世に出てきて、それが聴かれる」ということの本質に立ち返ってみると、

ミュージシャンにとっては「自分の音楽を聴いてもらいたい」「それで得たお金で生活をして、次の活動に繋げたい」ということであり、

リスナー(ファン)にとっては「その人の音楽を聴きたい」「その人の活動に貢献したい」

ということではないかと思います。

Apple MusicやSpotifyといったサブスクリプションサービス(以降サブスク)の登場で、ミュージシャンにとっての「自分の音楽を聴いてもらいたい」という欲求は(実際にどこまで聴かれるかはさておき)リリースと同時に世界全体に公開されることで環境的には充分に満たされ、ファンにとっての「その人の音楽を聴きたい」という欲求もほとんどタダ同然で満たされるようになりました。いってしまえば、「音楽を効率よく届ける」というこれまでの音楽のメディアの変遷が行くところまで行ったという話で、ある意味自然な流れとも言えそうです。そして、一概に悪いことばかりとは言えないと思います。

問題は、ミュージシャンにとっての「それで得たお金で生活をして、次の活動に繋げたい」という部分と、リスナーにとっての「その人の活動に貢献したい」という部分が全く満たされなくなったことです。

サブスクには、曲が再生される度にそのミュージシャンに少額のお金が入るという、これまでの音楽のメディアとは違う性質があります。要するに広く長く聴かれれば、その分継続して収入を得られるわけですが、よしんばそういった幸運にミュージシャンが恵まれたとしても次作の制作費が貯まるまでに長い時間がかかってしまいます。そして、大半のミュージシャンがサブスクからの収入で元々の制作費自体をペイ出来ていないのが現状ではないかと思います。

 

僕はこれまで「サブスクで聴いて、気に入ったらCDを買う」といった形で好きなミュージシャンの活動にささやかながらでも貢献出来たらと思ってきましたが、正直に言うと、たまに取り出して歌詞カードを読むことはあっても基本的には一回パソコンに取り込んだら大体の作品はすぐに棚の中に仕舞っています。そして、”物”に対する執着も年々無くなってきていますし、そういった傾向は今の時代においては多分僕に限ったことではないだろうと思います。物に対する執着がなくなっていくと、ミュージシャンに貢献するという目的において「CDを買って支える」ということの効率の悪さが嫌でも頭に浮かびます。僕はプレス工場や小売店、物流コストにお金を払いたいわけではないからです。

ミュージシャンの側から考えた場合はどうでしょうか?もちろん、自分の作品をCDやレコードといった形として残したいという気持ちがあるのは理解出来ます。もしくは、自分の作った作品で次に繋がるお金を得る方法としてCDはまだ必要という人もいると思います。しかし、これからますますCDが売れなくなる時代がくることは明らかです。今であれば、音楽には”ライブ”という音源とは別の体験があり、そちらで得た利益で活動するということも可能かもしれません。(ちなみに映画には”映画館”という上位体験があります)ただ、それも長い目でみればバーチャルリアリティの中でのライブや映画館の疑似体験によって、体験としての希少性や優位性も今ほどは保てなくなるかもしれません。

 

ここで、音楽産業にまったく関わっていないイチ音楽リスナーからの無責任な提案ではあるんですけど、「QRコードを使った投げ銭」ってうまく使えないでしょうか?

中国では既にスマホを使ったモバイル決済、例えばアリペイやウィーチャットペイが当たり前のように普及しています。

日本ではようやくこれから普及していく段階ですが、おそらく2020年の東京五輪くらいまでにこういったアプリが使いやすい環境が整えられ、使用する人も増えてくるだろうと思っています。

例えば、LINEにお金をチャージしておいて使用するLINE Payや、銀行口座から直接送金するMoney Tapでは、アプリでQRコードを読み込んで払いたい金額を入力するだけで送金が可能です。クレジットカードを持つ必要もありません。

 

ミュージシャンからすると、必要な手間は自身のQRコードを公式サイトやSNSに貼っておくだけです。メジャーと契約してる人は難しいかもしれないですし、インディーでも独立独歩の人以外はレーベルとの取り分の相談が必要になるかもしれませんが試すのは簡単です。

リスナーからすると、好きなミュージシャンに対して、自分がその人の作品に感じた価値に見合う金額を任意に決めて、手軽に、ロスなく好きなミュージシャンに送金出来ます。仮に1,000円のCDを買っていたら、そのうちの100円くらいしかそのミュージシャンの手元に入らないかもしれませんが、1,000円を送れば1,000円がそのままミュージシャンの手元に入って次の制作に繋がります。個人的にはこのあり方は凄く健全だなという気がします。もっというと、「サブスクで聴いてみて結構よかったから100円投げた」くらいのカジュアルな感覚でこういった行為がドンドン行われるようになるといいなと思います。というのも、デジタルに変換出来る(つまりインターネットに乗せることが出来る)あらゆる娯楽(音楽、映像、漫画など)の作者は今後そういった形を取らないとこれまで以上に継続して活動していくのが難しい時代になるんじゃないか、という気がするからです。

 

「サブスクでタダで聴いた上で何のメリットもなくお金を払う人なんてそんなにいない」とか「BandcampのName Your Priceみたいなもんじゃん」って意見もわかりますが、音楽オタクしか登録していないBandcampとは違ってスマホを持っているあらゆる人が対象になりますし、手間もかからないので試してみるのはありかなと思います。

現状、ミュージシャンはサブスクでほぼ無料で音楽を公開しているようなものなので、こういったことを物乞いのように思わずに堂々とやってほしいですし、ファンにとっての「その人の活動に貢献したい」という欲求が効率よく満たされるための窓口としてあってもいいのかなと思います。